IT業界で働く上で、派遣社員として働くことが一般的になっているというのが実情です。
求人を色々探しても、SES企業などの多さにびっくりした人も多いのではないでしょうか。
技術者の需要が高い一方で、なぜ派遣社員が多く採用されるのか、その背景には企業側の理由や業界の特性が隠れています。
この記事では、なぜIT業界で派遣社員が多いのか、さらに正社員として働きたい場合に必要なステップについて、さまざまな視点を交えて詳しく解説します。
IT業界で派遣ばかりなのはなぜか?
企業側のコスト削減
IT業界で派遣社員が多くなる背景には、企業側がコスト削減を目指しているという理由があります。
特に、プロジェクト単位で仕事が進行するため、長期的に雇用するよりも、必要な期間だけ派遣社員を活用する方が企業にとってはメリットが大きいのです。
例えば、Aプロジェクトでは5人の開発要員がいるが、このプロジェクトが終われば人が余る。
そういう場合に、自社で要因を確保するよりも、他社に派遣してもらうほうが、年間のトータルコストが安くなります。
そのため、「派遣社員の活用は、人件費の負担を軽減し、短期間で必要なスキルを持った人材を確保する方法として最適」とされています。
即戦力となるスキルを持つ人材が求められている
IT業界では、急速に変化する技術環境に対応するために、即戦力となる人材が必要とされています。
企業は、「即戦力をすぐに採用し、プロジェクトに参加させることで、納期に間に合わせることを優先」するため、派遣社員が多くなる傾向があります。
正社員採用の場合、育成や研修が必要となり、即戦力を求める企業のニーズにはフィットしません。
プロジェクト単位での契約が多いため
IT業界では、プロジェクトが終了した時点で契約が終わることが一般的です。
そのため、企業にとっては、派遣社員を契約社員として採用する方が効率的で、「プロジェクト終了後に次の人材を即座に調達できるメリットがある」といえます。
派遣社員は、特定のスキルや経験を持っているため、プロジェクト単位での契約が重宝されています。
業界特有の契約形態とフリーランス志向の高まり
最近では、IT業界でフリーランスとして働く技術者が増えています。
「フリーランスと派遣社員の境界線が曖昧になっている」という現実もあり、契約社員や派遣社員という形態が進化し、より柔軟に働ける環境が提供されています。
IT業界では、フリーランス志向が強くなる中、派遣社員として働くことがキャリアの選択肢の一つとして認識されていることも影響しています。
技術力が身につくまでに期間がかかりすぎ、且つ転職されるリスクが高い
IT業界では、技術者が一人前のスキルを身につけるためには時間がかかります。
新しい技術やツールが次々に登場するため、専門性を高めるには継続的な学習が必要です。
企業が新たな社員にかける育成コストが膨らみ、さらに「スキルが身につくまでの期間が長すぎて、その社員が途中で転職するリスクが高い」ため、正社員として採用することに対して慎重になる傾向があります。
特に、IT業界では転職が盛んで、経験を積んだ技術者がすぐに他社に転職することも多いため、企業は長期的な雇用を避け、派遣や契約社員を選ぶことが多いのです。
実際、私の会社でも未経験の新人が実務を通してスキルを付けるのに、少なくとも3年程度かかります。
一方で、転職市場では3年実務経験があれば、それなりに給料を上げて転職が可能です。
そうなると、折角育てた人員が転職してしまうため、ジレンマが生まれています。
IT業界で派遣の業務がない企業にはどういうところがあるのか
大手企業や有名企業
大手企業や有名企業では、正社員として長期的に働ける安定した環境を提供しています。
これらの企業は、育成プログラムやキャリアパスを整備しており、「社員を長期的に育てる方針を持つ」ため、派遣社員を利用することが少ない傾向があります。
特に、企業規模が大きく、プロジェクトが長期的に継続する場合、正社員を採用してその人材を育成する方が合理的とされます。
これらの企業では、派遣社員ではなく、正社員として働く機会を求める人にとっては魅力的な選択肢となります。
技術力が重視される企業
技術力が重視される企業、特に研究開発を行う企業や製品開発を行う企業では、「専門的な知識やスキルを持つ社員を確保し、その社員に長期的に投資する方針」を取ることが一般的です。
特に自社のサービスや製品を作っている企業ほど、
「技術力が下がる = 売上も下がる」
という風に、ビジネスに直結していることが多いです。
こうした企業では、派遣社員よりも正社員を雇うことで、企業の長期的な成長を支える人材を育てようとしています。
そのため、技術職の正社員採用が多く、派遣社員の業務はあまり見られません。
安定した業績を持つ企業
安定した業績を持つ企業は、業績の良さを基盤にして、「社員に対して長期的な雇用を提供する」ことが可能です。
こうした企業では、事業の安定性が派遣社員を利用する理由となるリスクを回避し、社員として長期的に働ける環境が整っています。
また、安定した業績により、企業が社員に対して福利厚生やキャリアアップの機会を提供する余裕が生まれ、正社員の採用が進んでいます。
自社開発を行う企業
自社で製品やサービスの開発を行っている企業では、長期的なプロジェクトを見越して、社員を継続的に採用し育成する傾向があります。
自社開発に携わるためには、特定の知識や技術が必要であり、社員をじっくり育てていくことが求められます。
こうした企業では、派遣社員に頼らず、正社員として働くことが基本となっています。
また、こういった企業では派遣社員などを使ってしまうと
「自社のサービスの中身を他社に見られる」
ことになります。
これは、守秘義務があるとは言え、大きなリスクです。
技術的に難しいものであればあるほど、研究開発費が多ければ多いほど、この知見を他社に持ち出されるのは非常に大きなリスクなのです。
同じ会社で派遣業務とそうでない業務がある場合、どうすれば派遣されないようになるのか
一方で、自社の事業内容の中に、SES部門と自社サービス開発部門が両方あるような企業も存在します。
そういった企業に現在働いている場合や、転職先としてそういう企業を選んでいる場合、どちらに配属されるのかわかりません。
しかし、できれば自社で開発をしたい。
そう思ったときにやるべきことをまとめていきましょう。
業務のスキルアップと実績を積む
同じ会社内で派遣業務から正社員としての業務に転換するためには、まず自身のスキルを向上させ、実績を積むことが重要です。
「特定の業務において高い成果を上げることで、派遣社員から正社員へとステップアップできる可能性が高くなる」からです。
特に、技術的なスキルやプロジェクト管理の経験が積まれると、企業内での評価が高まり、派遣社員から正社員に移行するチャンスが広がります。
私の会社でも同じような状況なのですが、
「技術力がある人を、他社のビジネスに使うのはもったいない」
と考えています。
それなら、自社のサービスを作る方に注力するほうが良かったりもします。
反対に、勤務態度が悪かったり、能力のない人ほど
「他社に言ってもらって、日銭を稼いでもらう」
という考えになりがちです。
そのため、派遣業務が嫌なら、しっかりと技術を身に着けていくことが重要です。
積極的に正社員採用を希望する意思を伝える
派遣社員から正社員に転換したい場合、「上司や人事担当者に積極的に正社員採用の意向を伝えることが効果的」です。
自分が正社員として働きたいという意思を明確に示し、そのためにどのような努力をしているかを伝えることで、企業側にその意思を伝えることができます。
こうしたコミュニケーションが、正社員としての登用に繋がることがあります。
柔軟に業務をこなす姿勢を見せる
業務の内容に柔軟に対応することも、派遣から正社員への転換に役立ちます。
新しい技術や業務に積極的に取り組む姿勢を見せることで、「企業にとって必要な人材として認識される」ことができます。
特に、変化に強い人物は評価されやすいため、積極的な姿勢が転換の一因となります。
管理職を目指す
今の時代、IT業界で求められていることの1つが
「マネジメント力」
「顧客折衝力」
だと感じています。
実際、私自身が転職活動をしている中で、面接官や現場の担当者が求めているのは、こういったスキルです。
これらは、エンジニアの中でもやりたがらない人が多く、どうしても会社のピースとして不足しがちです。
特に理系からIT業界に入ったような人の中には、人とのコミュニケーションを苦手としている人も多く、それが理由でシステムエンジニアを目指したのに・・・という現状が広がっています。
そのため、こういったコミュニケーション力を身につけることで、派遣業務のような現場仕事から抜け出せる可能性が高いです。
まとめ
IT業界で派遣社員が多く採用される理由には、コスト削減や即戦力の確保、プロジェクト単位での働き方などが挙げられます。
しかし、正社員として働くためには、スキルや専門性を高めることが求められます。
自社開発を行う企業や安定した業績を持つ企業では、正社員として働けるチャンスも多いため、まずは自分のスキルを磨き、企業選びにも慎重になることが大切です。
また、同じ会社で派遣業務から正社員に移行したい場合は、業務スキルの向上や意思表示をすることが重要です。