社内SEは、企業内部のシステム管理や運用を担当するため、非常に重要なポジションを担っています。
しかし、その反面、転職を考える際に多くの社内SEが「転職は難しい」と感じる場面が多々あります。
この記事では、なぜ社内SEの転職が難しいと言われるのか、その理由と共に、転職活動を成功させるための具体的な対策やキャリアの選択肢を詳しく解説していきます。
また、社内SEにおすすめの転職先についても触れ、転職を成功させるためのヒントを提供します。
社内SEからの転職が難しい理由
スキルの幅が狭い
社内SEとして働く際に使用するスキルは、特定のシステムやソフトウェアに依存する傾向が強いです。
企業内の業務に特化したシステムやツールをメインで扱っているため、「汎用的なITスキルを身につける機会が少ない」という問題があります。
また、1つの企業で、色々なクラウドサービスを使っていることは稀です。
例えば社内で使っている人事システムを、数カ月ごとに変えてしまうと、現場の負荷が高くなってしまいます。
そのため、かなり長い期間同じシステムを使い続けるのです。
特定のERPシステムや内部管理システムに特化している場合、他社で同様のシステムを扱っていなければ、そのスキルが転職市場で評価されにくいというリスクもあります。
このため、転職時にスキルの汎用性が不足していると感じ、転職活動が難航するケースが多く見られます。
社外との接点が少ない
社内SEは、主に社内の従業員や部署をサポートする業務に従事しているため、外部のクライアントやベンダーとの接点が少ないことが多いです。
そのため、「業界の最新動向や他社の技術に触れる機会が少ない」というデメリットがあります。
IT業界は技術革新が非常に速く、クラウドコンピューティングやデジタルトランスフォーメーションなど、最新技術やトレンドに遅れずに対応することが求められます。
「自社の技術に依存したスキル」だけでは、他社に移る際に即戦力として評価されにくいことが多く、転職が難しくなる要因の一つです。
会社から高く評価されている場合は、ベンダーとのやり取りを任され、「ベンダーコントロール」をすることもありますが、多くの場合、立場的に「仕事を依頼する側」であるため、顧客折衝能力が上がりにくく、市場価値としては低くなりがちです。
専門性が限定的
社内SEは、自社の特定の業務やシステムに関する深い知識を持っていますが、それが必ずしも転職市場で広く評価されるとは限りません。
特定の業界や業務プロセスに特化していると、その専門性が他の業界で通用しないことがあります。
たとえば、金融業界での社内SE経験があるとしても、製造業や小売業への転職では、その経験が直接役立たないケースが多くあります。
このように、「他業界でのスキル転用が難しい」という点で、転職活動に苦戦する可能性があります。
社内SEが転職を成功させるための対策
幅広いスキルを身につける
転職活動を成功させるためには、社内SEとしての専門的なスキルだけでなく、「業界全体で通用する汎用的なITスキル」を習得することが重要です。
たとえば、プログラミング言語やクラウド技術、データベース管理、セキュリティに関する知識を習得することで、転職市場での価値を高めることができます。
特にクラウド技術に関する知識や経験は、今後のIT業界で非常に重宝されるスキルです。
クラウドサービスを利用している企業は急速に増えており、AWSやAzureなどの知識を持っていると、転職活動において大きなアドバンテージになります。
社内システムを作ってみる
IT業界での転職を考えている場合には、「プログラミング経験」というのは非常に役に立ちます。
単純に開発案件に入ることだけではなく、他社の社内SEになる場合などでも役に立ちます。
私自身も社内SE時代にスクラッチで社内システムをいくつも作っていましたが、その経験を買われていくつもの企業に転職ができました。
特に多くの企業で食いつきが良かったのは
「自分自身で要件定義からリリースまでやっていること」
「他部署に積極的に関わりながら仕様を詰める」
という部分でした。
作るだけならハードルは低いものの、
「顧客の要望をどのようにシステムに落とし込むか。どこまでをシステム化し、どこからを 運用でカバーするのか」
ということを決めていく部分は、経験が必要です。
これは、私自身も良い経験になりましたし、面接でも評価してもらいました。
そのため、今いる会社でシステムを作るということに挑戦してみるのが良いでしょう。
ネットワーク環境などの勉強をする
社内SEの多くは、社内で利用する端末やPCの管理も行っているでしょう。
端末のネットワーク設定やそもそものネットワークの構築なども行っているケースがあります。
こういった仕組みの部分を理解することは、単にコーディングができるだけのエンジニアよりも市場価値が高くなることがあります。
そのため、日々の業務を漫然と過ごすのではなく、使っている製品についての深い知識や仕組みの部分について勉強していくことが転職の可能性を高くします。
ネットワークに加えて、セキュリティやCUIでの調査などは、どの企業に行っても役に立つ汎用的なスキルですので、勉強しておいて損はないでしょう。
業務内容を整理しアピールポイントを明確にする
社内SEとして日々行っている業務内容を見直し、「転職市場でアピールできるスキルや実績を整理」しておくことが重要です。
例えば、業務効率化やプロジェクト管理、システムの導入・運用に関する成功事例をまとめ、転職活動で具体的にアピールできるように準備しておきましょう。
実績を具体的に数値で示すことができると、採用担当者に対して説得力を持たせることができます。特に、コスト削減や効率化に成功した事例は、他の企業でも高く評価されるポイントです。
社内SEが転職する際のおすすめ転職先
ITコンサルタント
社内SEとしての経験を活かすことができる職種として、「ITコンサルタント」があります。
ITコンサルタントは、企業のIT戦略を立案・サポートする役割を担い、クライアント企業のシステム導入や業務プロセスの改善を行います。
社内SEとしてのシステム管理や運用の経験は、ITコンサルタントとしてのキャリアアップに直結することが多く、特にクラウドやデジタルトランスフォーメーションの分野で活躍できる可能性があります。
他社の社内SE
社内SEから社内SEへの転職も、ハードルとしては低めであると考えられます。
もちろん、前述したように業種が違えば、必要な知識や経験が変わってくるので、難しいことには代わり有りませんが、それでも
・会社にはどのようなシステムが有るのか
・どういう理由で今のクラウドサービスを導入したのか
・システム導入の際の懸念事項は何か
・ベンダーコントロール能力
などは、社内SEとして働く上で汎用的に扱えるスキルでしょう。
そのため、社内SEからシステムエンジニアになるよりも、社内SEから他の会社の社内SEになる方がハードルは低いでしょう。
ただし、今の会社を辞める理由が
「どこの社内SEも同じ」
というような場合には、この選択肢はやめておくほうが良いでしょう。
プロジェクトマネージャー(PM)/プロジェクトリーダー(PL)
システム開発会社やITコンサルティングファームにおけるプロジェクトマネージャー(PM)やプロジェクトリーダー(PL)は、社内SEのプロジェクト管理経験が活かせる職種です。
特に、複数の部署やクライアントと調整しながらプロジェクトを推進した経験は、外部向けのプロジェクト管理においても高く評価されます。
また、プロジェクトマネジメントに関する知識をさらに深めることで、大規模なシステム開発プロジェクトや新規システムの導入プロジェクトを任される機会が増えるでしょう。
PLやPMの場合、自社の社員だけで開発を進められる事もありますが、
「派遣やBPを雇ってプロジェクトを進める」
ということが必要になるケースも多々あります。
そのため、ベンダーコントロールなどの知見が役に立つことがあるのです。
クラウドエンジニア
クラウド技術の需要が急速に拡大している今、「クラウドエンジニア」としての転職も非常に魅力的です。
社内SEとしてオンプレミスシステムを管理していた経験を活かし、クラウド環境への移行プロジェクトやクラウドベースのシステム運用に携わることができます。
AWSやAzure、Google Cloud Platform(GCP)などの主要クラウドサービスに関する知識を習得することで、クラウドエンジニアとしてのキャリアアップを目指せるでしょう。
社内IT戦略担当
大手企業や中堅企業の内部で、IT戦略を推進する役割を担う「社内IT戦略担当」への転職も、社内SEの経験を活かせる職種です。
企業内のシステム全体を俯瞰し、IT戦略の立案やシステム導入、業務改善を主導する役割を担います。
特に、ITガバナンスやセキュリティに関する知識が重要視されるため、これらの分野での経験があると転職活動において有利になります。
まとめ
社内SEが転職を考える際には、スキルの幅や業界特化型の専門性が課題となることが多いですが、幅広いスキルの習得やユーザーとの折衝、そして自身の実績を整理しアピールポイントを明確にすることで、転職を成功させるチャンスが増えます。
特に、ITコンサルタントやクラウドエンジニア、プロジェクトマネージャーなど、社内SEの経験を活かせる転職先を見つけることが重要です。
今後のキャリアアップを目指し、適切な対策を講じながら転職活動を進めましょう。